庭木が大きくなった時に、ハサミで簡単に切れたらいいな、と思いますよね。
園芸用のハサミは売り場に行くと分かりますが、
実にいろんな形のハサミが売られています。
その中でも目を惹くのが、
刃が大きくて、両方に持ちてが分れる「刈込ハサミ(刈込鋏)」ではないでしょうか。
片手で切るだけでは大変でも、
両手を使って切れるのなら、きっと簡単に庭木も切れるのだろう?
これで、手っ取り早く木が切れる。。。
ちょっとした勘違いとも言えないかもしれませんが、
誤解されている所も多々あるのかな、と思っています。
- 刈込ハサミを使うと楽に切れる場面と使い方
を出来る限り簡単にご紹介したいと思います。
庭木を切る機会があれば、どうぞご参考ください。
●「刈込ハサミ」とはどんなハサミなの?
一般的には、ハサミの刃が通常の園芸用ハサミより大きく、
両手で持って使う形がほとんどです。
その為、どんな枝でも簡単に切れる!という誤解を自然に生んでいるように思います。
ハサミは大きくなっていますが、基本的には「植木ハサミ」の延長線にあるハサミと考えた方が良いです。
誤解の多くが、「よく切れるハサミだから、太い枝でも簡単に切れそう!」
なんですが、実際に太い枝を切ってみれば現実を知る事になります。
太い枝ばかり切っていると、
- 刃がかける
- 柄が折れる
- とても疲れる
ことになりかねません。
「刈込ハサミ」は切れるはず、という幻想を持っているとこんな時に「もっとよく切れる刈込ハサミが欲しい」と思ったりします。
私も昔は3,000円程度の少し安めの刈込ハサミを使っていて、
切れ味が今一つだな~、と思っていました。
そして、6,000円ほどだして、岡恒の刈込ハサミを買って、
流石よく切れるぜ!とガンガン切っていたら、
柄が折れました・・・・。
単純にハサミの刃が大きくて重い鋼なので、力を入れれば太い枝でも無理やり切れます。
が、鋼は強いから持ったとしても、木製の柄の方がダメになってしまうんですよね。
岡恒のハサミでもダメか…。
ここまで来て、ようやく「刈込ハサミ万能」幻想から抜け出す事ができました。
- 刈込ハサミとはいえ、太い枝を簡単に切れるわけではない、
事が分れば、刈込ハサミが得意とする切り方をすればいいだけです。
無理をしなければ、やはり刃が大きい分早く作業が終わります。
両手で作業するから、疲れも感じにくいですよね。
「刈込ハサミ」とは、
- 植木ハサミが大きくなった形をしており、両手で使う事ができる
- 広い面積の刈込には、刃が大きい分、植木ハサミより早く切る事ができる
- 両手で切るので、片手よりも楽に切る事ができる
事が特徴といえますね。
●「刈込ハサミ」で伸びた庭木を簡単に切るコツ
「剪定ハサミ」のお勧めページでも紹介しましたが、
「刈込ハサミ」が向いている場面は、太い枝を切った後の刈込作業になります。
細い枝ばかりになった時に、刈込ハサミを使う事で楽に早く作業が終わります。
太い枝は、「剪定ハサミ」で切って取り除いておくことがコツです。
超当たり前の話なんですが、結局これが一番早くて一番楽です。
ハサミを取り換えるのが面倒で、刈込ハサミでガンガン太い枝も切っていると、
私のように値段の高い岡恒のハサミの柄を折ってしまう事になります。(悲)
刈込ハサミでどのぐらいの太さが切れないか?というと、
- 切った時に衝撃がくる太さ
- 両手で力を一杯入れて勢いよく切らないと切れない太さ
が、危ない枝の太さです。
●刈込ハサミの間違った切り方とは?
自分で庭木を切っているお客様のお庭にお邪魔した時、
枝をよく見せてもらうと、この画像のような間違った使い方をしている事があります。
刈込ハサミで少し高い所の枝を切る時、よくあるパターンの切り口。
枝の塊の中で、きりやすそうな細い枝で横向きの枝を切ってしまう。
しかも、離れた所から切るので、込み合った所にハサミが入らず、
枝が発生している部分が「こぶ」のように残ったまま。
横枝から切っているので、立枝が残っている。
しかも、幹の方へ向かって伸びている内向きの枝が「刈込ハサミ」では刃が入らないため、そのまま。
この切り方では、モサモサしやすい枝を残しているのと同じです。
今年は簡単に切れたと思っても、
来年から早くモサモサして、さらに枝が太くなってしまい、切る事が年々大変になってしまいます。
毎年、楽に庭木を切るコツは、
立枝を先に切る事です。
そして、それは「刈込ハサミ」では、非常に難しい。
細かい作業が苦手なのです。
難しい作業はしない方が良いと思います。
場面によってハサミを使い分ける事をお勧めします。
そうする事で、刈込ハサミで楽に切れる事になりますし、
ハサミも長持ちしますよ。
最初の画像と見比べると、全く違う形になっているのが分かるでしょうか?
刈込ハサミでこうやって付け根から切るのは、私たちでも難しい作業ですし、
ハシゴを使って、「剪定ハサミ」で付け根から切り取るのが一番早くて簡単になります。
松の木を剪定ハサミで切る人はほとんどいないと思いますが、
他の木でも簡単な切り方の基本は同じです。
立枝を付け根から切り取る。
横枝を全体のバランスを見て、整える。
この整える場面が、刈込ハサミの出番です。
が、松の木の場合は、刈込ハサミは基本的に使わないですね。
(片手用刈込ハサミの場合は、松切り用がある!!)
●庭木が簡単によく切れる お薦めの刈込ハサミとは?
先ほどの切り方のコツを分かった上で、よく切れる刈込ハサミとはどれか?を独断と偏見でお勧めします。
もちろん、どんな人にでも良いハサミという物はありません。
ある程度ざっくりと使う人を分けて、それぞれお薦めをご紹介したいと思います。
初心者向けの「刈込ハサミ」
ここで初心者というのは、
- あまり剪定をした事の無い人
- これから剪定を続けるかどうか分からない。(だからとりあえず値段の安い方が良い)
- 刃を研いだりする基準が分からないので、手をかけたくない
という方をイメージしています。
ある程度ほったらかしで済ませたいという方に向いてますね。
ですから、値段の安い刈込ハサミは、
・切れ味が落ちてくると研がなくてはいけない
・ハサミの角度や柄の作りが簡素で、一つ使いにくい
という理由でお勧めしません。
逆に、太い枝かどうか見分けて切れる人
切れ味が落ちたらすぐに研いで復活させれる人
は、値段が安くても使いこなせますが、
そういう人はきっと良いハサミが欲しくなりますよね。。。(苦笑)
値段が安めで、基本的な性能が備わっているハサミ。
初心者には、大き目の刈込ハサミより、扱いやすい小さ目の刈込ハサミをお勧めします。
私は仕事で両方持っていますが、
正直、小さい刈込ハサミをメインで使っています。
やはり、使いやすいんですよね。(笑)
●初心者にお薦め 刈込ハサミ
鋼典 調質 花生垣 刈込鋏 小 150mm B-251
鋼典(かねのり)の刈込ハサミ。
新潟県三条市にある、園芸用ハサミの老舗ブランドです。
1万円以上の本格的な刈込ハサミもありますが、
2,000円~3,000円ほどで買える、お値打ちな刈込ハサミも用意されています。
基本的な刃の性能が備わっているので、
直ぐに切れなくなるという心配がありません。
私も最初の頃はこの価格体の刈込ハサミを色々使って試していました。
どうせなら最初からある程度の性能が欲しい初心者の方には
●初心者にお薦めの ちょっといい刈込ハサミ
アルスコーポレーション 軽量刈込鋏K-800レッド K-800-R
Amazonレビューを見てみると、
・切れ味がとてもいい
・刃だけを交換 できるのでリーズナブル
等の良い評価がついてます。
私も、観葉植物用に植木ハサミを持っていますが、
このアルスコーポレーションさんの植木ハサミを使っています。
持つ部分が樹脂でできていて、とても軽い。
刃が特殊な仕上げになっていて、切れ味が長持ちする。
等、気に入ってずっと使っています。
私たちは毎日もち歩くので、
切れ味が凄く良いが重いハサミよりも、
普通に切れて軽いハサミの方がやっぱりいいですね。
初心者だけど、これからずっと使っていきたい刈込ハサミをお探しなら、これはいいですよ!
中級者向けのハサミとは?
ここでいう中級者とは、毎年自宅の庭木を剪定するようになって、今の刈込ハサミよりもっと良いハサミが欲しくなった。。。というきたら場合をイメージしています。
私たちプロでも、最初は安いハサミを使っていて、段々慣れてきた時にもっといいハサミを使ってみたい!と思い出すようとなものですね。
値段は初心者向けよりも少し高くなります。
その分、使い勝手は随分良くなります。
●中級者向けのちょっといい刈込ハサミ
216 岡恒 刈込鋏 55型 ショートハンドル
岡恒さんの刈込ハサミ。
柄の短い、ショートハンドルをお勧めします。
およそ、5,000円~6,000円ほどで手に入ると思います。
数字の55型、60型、65型というのは、刃の長さの違いです。
刃が長くなるほど値段も上がります。
刃が大きい方が、より広い面積が切れるようになりますので、
便利ですが、当然、使い方にもコツが必要になります。
余分に力もいります。
刃が長い分、「刈込ハサミ」そのものが重くなります。
一長一短というところですね。
岡恒さんは園芸ハサミのブランドとして非常に強いものがありますね。
何故なんでしょうか?
ホームセンターに行けば、岡恒さんは値段の高いハサミの代名詞のように置いてあります。
手に入りやすいですよね。
刃が非常にしっかりしている。
鍛造手打ちのような鋭さは無いが、太い枝をガンガン無理して切っても刃が欠けるという事がない。
(本当は無理して太い枝を切らない方がいいですよ)
刃と刃を止めるカシメの精度が高く、
長く使っても緩みが少ない。
(ここが緩むと、切り難くなります)
私たちも剪定を20年近く仕事で続けてきたとはいえ、
刃の専門家では無いわけです。
手入れだって正直完璧にはできない。
そんな状態でも、ある程度性能を発揮しれくれるタフさがある、というのは有難いですよね。
値段の安い刈込ハサミと比べて何が違うのか?というと、
切れ味が安定して続く、という安心感でしょうか。
又、値段の安いハサミは入れ替わりが激しく、
ちょっといいな、と思っても数年後には店に置いてない、、、
という事もあります。
岡恒さんのハサミはいつ見ても販売店に置いてあります。
手に入りやすいという事もお薦めポイント。
実際に、お店に行って、手に取って確認できるので、是非触ってみてください。
●セミプロ・プロ向けの刈込ハサミはどれ?
もうここまで来たら、趣味の世界です。(笑)
仕事でいえば、岡恒さんぐらいの切れ味があれば十分といえます
しかし、一度このハサミを使ってしまうと、
もう岡恒さんには戻れません。(苦笑)
別次元の切れ味。
鋼の重み。
刃と刃が擦れ合う時の軽快な音。
鋼事体の大きさが物語ります。
先ほどの岡恒55型の刃の長さは14.5㎝。
こちらの刃渡りは何と30㎝!!
材質/刃:安来鋼。
写真を見れば分かりますが、もう刃の暴力ですよ。(苦笑)
一般的にはホームセンターなどには置いてない事が多いですね。
私は刃物の町、関市の刃物センターで購入しました。
●セミプロ・プロ向けのおすすめ「刈込ハサミ」
鋼典 安来鋼刈込鋏 300mm A-70
「刈込ハサミ」は太い枝を切るのは苦手とはいえ、値段の高い刈込ハサミは、刃そのものが大きく重くなります。
手打ち鍛造の刈込ハサミは、生木への食い込みが良く、値段の安い物に比べて、明らかに太い枝が切れやすくなっています。
値段の高いハサミは、「剪定ハサミ」と同じく、
鋼の量と値段の違いになってきます。
剪定ハサミよりも刃の量が多いので、値段もけた違いです。
高い物は4万円代もあります!!
プロとはいえ、さすがにそこまで道具にお金をかけるのは、ちょっと勇気が要りますね。
私はまだ使った事がありませんが、4万円代の刈込ハサミがどんなものか?使っている人がいたら是非感想を聞きたいです。(笑)
私が使っているのは、18,000円ぐらいの物です。
そこそこいい値段ですよね。
切れ味はやはり別格です。
岡恒でもよく切れると思っていましたが、岡恒の刈込ハサミがオモチャのように思えます。
刃の重みと食い込みの良さで、
少し太めの枝が多いキンモクセイでも、バシバシ切れます。
又、ハサミの動きがスムーズで切れる音も軽快でリズミカル。
剪定作業が楽しくなる刈込ハサミです。(笑)
余談ですが、剪定の講習会を開いた時、
実際に生徒さんが使っているハサミを持参してもらい、
現場で実地講習をした事があります。
生徒さんの持ってきた刈込ハサミは見た事のないメーカーばかり。
見事に切れません!!(苦笑)
岡恒の刈込ハサミを使ってもらい講習をした後、
ちょっとだけこの安来鋼の刈込ハサミを体感してもらいました。
皆さん、目を丸くして驚かれていました。
そして、二人の人から「同じ物を買いました」との報告を…。(笑)
デメリットといえば、鋼が多い分、ハサミ事体の重さも随分重くなっています。
作業に慣れてない人では刃が鋭すぎて危ないので、本当に気をつけてくださいね。
●変わり種の刈込ハサミとは?
先ほど、太い枝は刈込ハサミには向かないと書きましたが、
厳密に言えば、太い枝を切る為の刈込ハサミが存在します。
●太い枝を切りやすい 刈込ハサミ
五十嵐刃物工業 鋼典 調質 剪定型刈込鋏 B-30
「剪定ハサミ」と「刈込ハサミ」を合体させたかのようなハサミです。
値段も3,000円ほどと手ごろな価格です。
が、良い点と悪い点がもちろんあります。
- 良い点 ・・・ 太い枝が切りやすい
- 悪い点 ・・・ 刃が小さい分、通常の刈込ハサミより広い面積を刈る時は遅い
このハサミを最初使った時は、太い枝が簡単に切れてなんて便利なんだ!と思いました。
偶々ホームセンターで見つけて、使ってみたのです。
でも、基本的にいつもホームセンターに置いてあるハサミでもないようです。
切れなくなってしまった後、同じようなハサミを探していましたが、なかなか見つかりませんでした。
今、切れ味の良い、刃の大きな刈込ハサミを知ってしまった時、
このハサミのメリットは?というと、以前より小さくなっています。
太い枝の多い、キンモクセイの垣根のような場合に良いのかな?
でも、私たちプロは、そういう場合にはエンジンバリカンを使ってしまいます。
その方が早くて綺麗に仕上がるからです。
(もちろん、切り口の綺麗さは個別にハサミで切った方が綺麗ですよ)
もう一つ、更に太い枝を切る事に特化したハサミが存在します。
太枝切りハサミです。
●五十嵐刃物工業 PRUMAN
ラクぎりミニ 太枝切鋏
アルミパイプ 450mmハンドル OM-450
これは、完全に「剪定ハサミ」を両手ように大きくしたイメージのハサミですね。(笑)
が、私は剪定では使っていません。
何故か?といえば、幹の付け根から綺麗に切ろうと思うと、
ノコギリの方が早いからです。
切り口の位置など関係なく、太い枝を切りたい!
そんな場合にはピッタリですね。
例えば、ノコギリで太い枝をまとめて切り落とした後に、
枝を切り分けて整理する時には、こういった「太枝切りハサミ」で切り分けてもいいのかもしれません。
私の場合は、そういう時はチェンソーを使ってしまいます。
大量にある場合ならその方が早いですし、
少ししかない場合なら、ノコギリで済ませてしまいます。
チェンソーが使えないバイトの子達に、太い枝を切ってもらう場合に、こういう太枝切りハサミを使うと安心かもしれませんね。
こういう特殊な刈込ハサミが便利だよ、という場面があれば、私自身も興味がありますので、是非教えていただけると嬉しいです。