
2020年5月30日 公開
2020年6月2日 更新
こんにちは、植木屋の片桐です。
5月もなかばを過ぎ、急に暑くなりましたね。
最近はこの時期になると気温が30度近くになり、まるで初夏の様に汗がでてきます。
植え込みしたばかりの植栽が水切れで枯れてしまう、、、何てこともありました。
春だから植物に安全と思っていたのは昔の事で、最近は天気が良すぎる事のリスクをみておかなければいけない、と気をつけています。
さて、5月に剪定をする時はどんな事に気をつけたらいいのでしょうか?
仕事を始めたばかりの頃、分からない事が沢山あり、剪定の勉強の為に何冊もの本を読みました。
- 「剪定のルールという物はあるようで実は決まった物は無い」
という文章に出会いました。
その時は、剪定について学ぼうと思ったのに、「決まったルールは無い」という言葉の意味が分かりませんでした。
その後数十年、剪定の現場で体験してきたのは、まさにこの言葉通りでした。
結論から言えば、
- 「正しい剪定の仕方」という確実に決まった教科書があるわけではない
- 庭木をどうしたいのか?に合わせて、このように切るといい、というガイドはある
ということは、例えるなら「剪定は秋にするべきものだ」、という決まったルールは特にない、という事だと思います。
確かに、花木などは花が咲き終わった直後に切り戻しをするとよい、というセオリーがあります。
そうなると、4月に咲く花、5月に咲く花、6月に咲く花。すべて直後に切らなくてはいけない?となれば、毎月剪定しなければいけない、という事になります。
ある意味、ヨーロッパの王室のような広大な庭では毎日のように職人が植物の手入れをしていました。
毎日作業をしようと思えば、毎日やる事はある、という事。
ただし、毎日剪定をするというのは、普通の家庭のお庭では現実的な話とはいえませんね。
ある程度、やるべき事をまとめておいて、5月に剪定するとしたら、何をどうするのか?
6月に剪定するとしたら、何をどうするのか?
と、その年は何月に剪定をするのか?を決めて、何をどうする、というプラン(アイデア)が産まれるという事です。
一番大事なのは、お庭をどうしたいのか?という貴方のアイデア。
それを実現する為に、この月は何をしたらいいですよ、という話は経験からお伝えできるかと思います。
でも、いきなりプランを考えてください、と言っても、今まで考えた事がなければ難しい話ですよね。
こちらのサイトでは、その時々の庭木の切り方についてアイデアをアップしていきます。
何かのお役にたてれば嬉しく思います。
もちろん、ここでアップする「アイデア」は、これが正しい切り方という物でもありません。
又、いま切るべきだという話でもありません。
庭木をこうしたい!という思いが共通するなら、
今はこの切り方が役に立つかもしれない、という考え方になります。
まぁ、切る時の考え方自体は、基本ルールに沿っていますので、
それはそれで、他の時期でも同じような切り方で間違いありません。
変わる事といえば、
春の季節はこれから大きく成長するから、強く切り戻してもいいよね。
秋の季節はもう枝が伸びなくなるので、弱い切り戻しをした方がいいよね。
という具合に、切り加減を調整するものだ、と思っていただくと良いかと思います。
又、この時期の剪定で注意するべき「セオリー」があります。
特に落葉樹は昨年の夏に蓄えた栄養を使い、花を咲かせ、芽を伸ばします。
その伸びた枝葉を切り取ってしまうと、又芽を吹き直す必要があります。
それは、木が消耗する、と事にもなります。
剪定するなら、面倒だから一気に枝葉を切り取る、、、というのは、春にする剪定ではありません。
あくまで庭木にとって害のないように。
そして、お庭が自然の姿で活き活きとして元気を保つように。
私たちがその庭をみて自然っていいな~と思えるように、その為のアイデアを一緒に考えましょう!
●ボックスウッドの5月の切り方

手前にある背の低い樹木は、ボックスウッドです。
一年中葉が茂っている常緑樹です。
葉が細かく茂るので、気に入った形に刈り込む事ができます。
ボックスウッドの様な細かな葉の常緑樹は、刃の大きな「刈込みハサミ」を使って、形を整える様に切っていきます。
リンク⇒「刈込ハサミの種類とお薦め」もご参考ください
こういった刈込ものの樹木は、年に一度バサッと切る、というやり方は適していません。
枝を切る事で脇芽が増えて、より細やかな葉が茂ります。
小まめに刈り込む事で、密度の高い面が増える、と覚えておいてください。
これから夏にかけて、伸びている間は何度も刈りこむ事で形を整えやすくなります。
成長が止まる夏以降は、飛び出した一部の枝だけつまむように切る、といいですね。
●ヒイラギの5月の切り方

こちらは、ヒイラギです。
一年中、葉が茂っている常緑樹になります。
ボックスウッドをそのまま拡大したような樹形をしていますね。
こちらも、刈込ハサミで外側の樹形を整えるように切っていくイメージです。

近くで見ていただくとよく分かりますが、
ヒイラギは葉が大きくて、一枚一枚の葉の形がよく分かりますね。
刈込みハサミで剪定する時に気をつける事は、
木に対して垂直にハサミを動かすのではなく、
刃先を斜めに差し入れて、少ししたの枝を切るようにします。
葉を垂直に切ってしまうと、葉っぱが切口だらけになります。
それでは、離れて見た時には仕上がりの形のラインが綺麗になるのは良いのですが、
近くで見ると、ヒイラギの特性の無い、ただの緑の塊と同じになってしまいます。
先ほどの、庭木をどうしたいのか?という問題がここに関わってきます。
面倒だから同じように切る、という場合は、ヒイラギをそもそも植える必要が無いのでは?という事になります。
ヒイラギの特性を活かすなら、葉の形を残すような剪定を気をつけたいと考えます。
木の特性を活かす剪定をする時には、
「特徴のある葉」をあまり切らないように気をつけます。
具体的にどうするのか?というと、
切りたいラインの少し下の枝を狙うように、斜めにハサミを入れてます。
「葉」ではなく「枝」切るようにします。
キッチリとしたラインはできませんが、仕上がりが柔らかい感じになります。
ヒイラギの木の雰囲気を活かした剪定ができます。
その分、普通に水平に切るよりも手間と時間と労力がかかりるのはちょっと我慢ですね。(苦笑)
この時期は大きくなった庭木を小さくしやすい時期です。
と言う事は、ヒイラギを小さくしたい場合には、どうしたらいいいでしょうか?
思い切ってヒイラギの木を小さくしたい場合には、葉先から切り込むのではなく、枝を下にのぞき込んで、分岐の少し上あたりを狙ってきります。
葉っぱが残るか残らないか、ギリギリまで下げると、その分小さくなります。
この場合には、葉の形を残すことはあまり考えず切る感じになりますね。
(今年は木を小さくするやり方を優先する、というアイデア)
●大きくなりすぎた、落葉樹を小さくする場合

かなり大きく繁った木です。
高さ2m以上。横幅5m以上の大株です。
これは、落葉樹のタイプですね。

ここまで大きくなっている場合は、これ以上伸ばすのは止めた方が良いと思います。
庭が狭くなってしまいますね。(苦笑)
ある程度小さくしながら間引きをするには、5月は良い時期です。
思い切って小さくしよう、と決めるのもアイデアの一つです。
さて、小さくする時は外側から見ているとサッパリ分かりませんので、少し中に入っていきます。
庭木の中に入っていくと、中は葉がほとんどなく、スカスカです。
よく見ると、一度枝が止められていて、途中からこのように分岐しているのが分かります。
庭木を小さくする剪定のページでも書きましたが、
こういう場合は、太い枝から間引いていきます。
少し太いので剪定ノコギリを使った方がいいでしょう。
リンク⇒庭木を小さくする時のやり方もご参考ください
私の場合は、自分の指の太さぐらいを、剪定ハサミで切りやすいかどうか?の判断基準にしています。
又、ハサミが入れやすいかどうか?
逆に、ノコギリが入りやすいかどうか?という作業性を、枝の状態を見て瞬間的に判断してハサミかノコギリを使うか?決めていきます。
楽に切れる位置や姿勢は、繰り返すうちに自然と身に付いてきます。
無理をして切らないように、いろいろ探しながら作業してみてください。

こうやって少し離れてみると、分岐から出ている太い枝は2本ほど。
後は、細い枝が3本ほどという様子が分かります。
(と言っても、写真では今一つ分かり難くてすみません…)
近づきすぎると、分からなくなってしまうので、ちょっと離れて全体の雰囲気を確認しながら、太い枝を何本まで切るのか?を考えながら作業を進めます。
太い枝を先に間引き剪定した後、
残った細い枝をどこまで縮めるのか?をイメージして、残りの細い枝は剪定ハサミを使って作業します。
この時は葉や芽を残しながら切ります。
扱いやすい「剪定ハサミ」で切った方が早くて綺麗に仕上がりますね。
リンク⇒剪定ハサミの種類と選び方もご参考ください
●落葉樹(ヤマボウシ)の5月の切り方

これはヤマボウシの木ですね。
これも落葉樹ですね。
常緑樹と落葉樹の樹形の違いが何となく掴めてきたのではないでしょうか?
常緑樹は葉が細かくて、密集して繁っている事が多い。
落葉樹は葉と葉の間隔が広く、幹が太く、離れて見ても幹が見えやすい。

落葉樹の場合は、外側を刈込ハサミで切り詰めるのではなく、
このような分岐した所から間引くように切っていきます。
全体の樹形を見ながら、上の方は太い枝を止めます。
(太い枝は幹に近い部分から切り落とす事が多い)
下の方に来るに従い、枝が細くなっていくので、細い枝の分岐を止めます。
(細い枝は幹から離れた部分から切り落とす事が多い)
全体の樹形のバランスを見ながら、どこが飛び出していて、どこがへこんで見えるのか?確認しておくといいですね。
基本は間引き剪定です。
そして、枝と枝の空間が狭いので、ノコギリでは分岐した部分を切るのが難しいです。
こういう場合は、刃先が細身の剪定ハサミを使う事が多いですね。
木の天辺の辺りは、昨年伸びた枝が太くなっているので、この部分だけは剪定ノコギリを使う事が多いです。
剪定ハサミで切りやすい枝の太さの目安は先ほど書きましたね。
どのぐらいの太さだったでしょうか?
・・・・
・・・・
・・・・
そう、私の場合は指の太さを目安にしています。
人差し指ぐらいの太さはまだ切れます。
親指ぐらいの太さになると、ノコギリを使った方がいいかな?という感じですね。
●常緑樹(カシの木)の5月の切り方

画像の左半分でモサモサ繁っているのは、カシの木です。
こちらは背の高い常緑樹になりますね。
よく葉が茂っている背の高い木になると、常緑樹か?落葉樹か?
慣れていない人では分かり難いかもしれません。
落葉樹に比べて、やはり葉がよく繁っていて、枝の塊が密になっている所が違います。
常緑樹であれば、刈込ハサミで葉の塊の部分を外から小さく切っていく方法もできなくはないですが、樹形をコントロールして、整えようと思うのなら、近くに行き枝の様子を見ながら間引く切り方をします。

カシの木の枝を内側に入って見た時の様子です。
込み合ってはいますが、前回切った場所から枝が出ている様子。
そして、そのうち2本が太くなっている様子が分かります。
まず、立枝を優先して切ります。
指で示した位置で、枝の付け根から「剪定ハサミ」で切ります。

次に、太い枝となる、下の方の枝を付け根付近で切ります。

太い枝を切った後は、細い枝ばかりになりますので、
葉先を少し止める感じで「剪定ハサミ」で切っていきます。
この時に、立枝はやはり付け根から切っていきますので、
「刈込ハサミ」は使わずに、「剪定ハサミ」をメインで作業を進めていきますね。
このように枝を切っていくと、枝が伸びる前の樹形に戻っていく感じですね。
そのうえで、バランスをみて、太い枝をもっと切り詰めたり、
逆に、寂しい所は太い枝を少し残したりします。
木の成長力の勢いは、上の枝に行くほど強く、太い枝が出やすいです。
下の方に行くほど、勢いは弱くなり、横枝が多くなってきます。
こういった特性がこの後の樹形を作っていきますので、
上の方は太い枝を多めに切り、下の方はあまり切り過ぎないように気をつけています。
●アイデアのまとめ
今回は、剪定をする時のアイデアという事で、
切った後の画像はありません。
「剪定」とはある程度のルールはあるものの、
「このように切るのが正しい」という答えはあるようで無い、と私は実感しています。
それは、1本の木を見る場合と、
お庭として全体を見る場合では、やはり仕上がりに大きな差がでるからです。
1本の木を正しく切っても、美しい風景のお庭にはなりません。
偶々なるかもしれません。
でも、最初から眺めの良い、自然の良さが感じられるお庭にできたらいいですよね?
その木の成長の具合を見て、今年このぐらい伸びるかもしれない、と予想を立てます。
目の前の木の枝を切りながら、頭の中には全体のお庭のイメージと、その木を離れて見た時のイメージを浮かべつつ、自然な風景になるように心がけます。
何年もそのお庭の剪定をするうちに、
過去の様子のイメージと未来の様子のイメージをぼんやりと思い浮かべながら、
「どの程度枝を切ったらいいの?」と聞く事で木が教えてくれるような感覚がします。
自然の風景を見るといいな~と思うような、
そんなお庭にだんだんなっていくと、自分も嬉しいし、お客様もとても喜んでいただけます。
それも、この仕事の良いところだと思っています。
何か参考になる事があれば、嬉しいです。
それでは。